古典和歌stream

押し返し物を思ふは苦しきに
知らず顔にて世をや過ぎまし

歌の意味
繰り返し思い悩むのは苦しいので、いっそ何も知らない顔をして世を過ごしてしまおうか。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1767

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 世を厭いながら捨てきれない心を詠む歌の三首目で、藤原良経の歌三首の三首目である。繰り返し思い悩むのは苦しいので、いっそ何も知らない顔をして世を過ごしてしまおうか、と詠む。思い詰めた末に、考えることをやめてしまおうかと迷う心を述べている。
 作者の「摂政太政大臣」は藤原良経である。原文に作者名はなく、前歌から続く。九条兼実の子で、摂政太政大臣に至った。『新古今和歌集』の仮名序を執筆し、書にも優れた。

 初句「押し返し」は、繰り返し、の意である。同じもの思いを何度も繰り返すさまをいう。
 二句「物を思ふは」は、思い悩むことは、の意である。前の二首で心の果てや来世を問うたことを受けている。
 三句「苦しきに」は、苦しいので、の意である。
 四句「知らず顔にて」は、何も知らない顔をして、の意である。
 結句「世をや過ぎまし」の「や」は疑問の係助詞、「まし」はためらいの意志を表す助動詞で、連体形で結ぶ係り結びである。いっそそうしようかと迷う心を示し、良経の三首を結んでいる。

おしかへす:繰り返す
しらずがほ:知らないふりをする顔つき
作者
藤原良経
出典
新古今和歌集
前の歌
我ながら心の果てを知らぬかな 捨てられぬ世のまた厭はしき
次の歌
長らへて世に住むかひはなけれども 憂きに換へたる命なりけり