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長らへて世に住むかひはなけれども
憂きに換へたる命なりけり

歌の意味
生き長らえてこの世に住む甲斐はないけれども、つらさと引き換えにして保ってきた命なのだ。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1768

詞書「五十首歌よみ侍りけるに述懐の心を」
 世を厭いながら捨てきれない心を詠む歌の四首目である。生き長らえてこの世に住む甲斐はないが、この命は数々のつらさと引き換えにして保ってきたものだ、と詠む。つらい思いを重ねてきたからこそ、命を軽んじられない心を述べている。詞書によれば、五十首歌の中で述懐の心を詠んだ歌である。
 作者の「守覚法親王」は、後白河天皇の皇子で、仁和寺の門跡となった。歌人たちに五十首歌を詠ませるなど、和歌の催しを行った。

 初句「長らへて」は、生き長らえて、の意である。
 二句「世に住むかひは」は、この世に住む甲斐は、の意である。
 三句「なけれども」は、ないけれども、の意である。「ども」は逆接の接続助詞である。
 四句「憂きに換へたる」は、つらさと引き換えにした、の意である。「たる」は完了の助動詞「たり」の連体形である。
 結句「命なりけり」の「けり」は、気づきを表す詠嘆の助動詞である。甲斐のない命ではあるが、つらさを代償として保ってきた重いものだと思い至っている。

かふ:引き換える。交換する
作者
守覚法親王
出典
新古今和歌集
前の歌
押し返し物を思ふは苦しきに 知らず顔にて世をや過ぎまし
次の歌
世を捨つる心はなほぞなかりける 憂きを憂しとは思ひ知れども