見ればまづいとど涙ぞもろかづら
いかに契りてかけ離れけむ
- 歌の意味
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見るとまず、いっそう涙がこぼれやすくなる。このもろかずらに、どのような宿縁があって、わたしは懸け離れてしまったのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1778
詞書「身の望みかなひ侍らで、社の交じらひもせで籠もりゐて侍りけるに、葵を見てよめる」
望みを絶たれた身を嘆く歌である。賀茂祭の葵を見るとまず涙がいっそうこぼれる、どのような宿縁で自分はこの葵桂から懸け離れてしまったのか、と詠む。詞書によれば、望みがかなわず、社に仕えることもせずに籠もっていた頃、葵を見て詠んだ歌である。詞書にいう望みは、下鴨社の摂社である河合社の禰宜の職を望んだことを指すとされる。
作者の「鴨長明」は、下鴨社の禰宜鴨長継の子である。後鳥羽院の和歌所の寄人となったが、のちに出家して日野に隠棲し、『方丈記』を著した。
賀茂祭は四月の中の酉の日に行われる賀茂社の祭で、社殿や人々の冠に葵と桂を飾ることから葵祭とも呼ばれる。
初句「見れば」は、葵を見ると、の意である。「ば」は已然形に付く順接確定条件である。
二句「まづいとど涙ぞ」は、何よりまず、いっそう涙が、の意である。係助詞「ぞ」を用いて涙を強く取り立てている。
三句「もろかづら」の「もろ」は、涙もろい意と、葵と桂を組み合わせた飾りであるもろかずらの意とを掛ける掛詞である。
四句「いかに契りて」は、どのような宿縁があって、の意である。「契り」は前世からの因縁をいう。
結句「かけ離れけむ」は、懸け離れてしまったのだろうか、の意である。「かけ」はかずらを懸ける意と通い、「けむ」は過去推量の助動詞である。社に仕える道から離れた身の嘆きを示している。
もろかづら:葵と桂を組み合わせた賀茂祭の飾り。「もろ」に涙もろい意を掛ける
まじらひ:人々の中に交じって勤めること
ちぎり:前世からの因縁。宿縁
- 作者
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鴨長明
- 出典
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新古今和歌集
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書き流す言の葉をだに沈むなよ 身こそかくても山川の水
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同じくはあれないにしへ思ひ出の なければとても偲ばずもなし