思ふことなど問ふ人のなかるらむ
仰げば空に月ぞさやけき
- 歌の意味
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思い悩んでいることを、どうして尋ねてくれる人がいないのだろう。見上げると、空には月が澄みわたっている。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1782
詞書「五十首歌の中に」
月に寄せて心を詠む歌の二首目で、慈円の歌三首の一首目である。思い悩むことを尋ねてくれる人はどうしていないのか、見上げると空に月が澄みわたっている、と詠む。人には問われない憂いを抱えながら、澄んだ月を仰ぐ心を述べている。詞書によれば、五十首歌の中の歌である。
作者の「前大僧正慈円」は、藤原忠通の子で、九条兼実の弟にあたる。天台座主を四度務め、史論書『愚管抄』を著した。
初句「思ふこと」は、思い悩んでいることをいう。本巻の第千七百五十四首の「何事を思ふ人ぞと人問はば」と対照的に、ここでは問う人のいないことが嘆かれる。
二句「など問ふ人の」の「など」は、どうして、の意である。
三句「なかるらむ」の「らむ」は原因推量の助動詞で、「など」を受けて、どうしていないのだろう、の意となる。ここで句切れとなる。
四句「仰げば空に」は、見上げると空に、の意である。人から目を転じて空を仰ぐ動作が示される。
結句「月ぞさやけき」は、係助詞「ぞ」を受けて形容詞の連体形「さやけき」で結ぶ係り結びである。問う人はいなくとも月は澄みわたっているとして、月だけが心を知るかのような趣を残している。
さやけし:澄んで明るい
- 作者
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慈円
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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月の行く山に心を送り入れて 闇なる後の身をいかにせむ
- 次の歌
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いかにして今まで世にはありあけの つきせぬものを厭ふ心は