みちのくのいはでしのぶはえぞ知らぬ
書き尽くしてよ壺の碑
- 歌の意味
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陸奥の岩手や信夫ではないが、言わずに心に秘めていることは、とても知ることができない。書き尽くしてほしい、あの壺の碑のように。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1786
詞書「前大僧正慈円、文にては思ふほどのことも申し尽くしがたきよし申しつかはして侍りける返事に」
書き送る言葉をめぐる贈答の歌である。言わずに心に秘めていることは知りようがない、壺の碑のように書き尽くしてほしい、と詠む。詞書によれば、慈円が手紙では思うことも言い尽くしがたいと言ってよこしたのに返した歌で、陸奥の地名を重ねて、遠慮なく書き送ってほしいと求めている。
作者の「前右大将頼朝」は源頼朝である。源義朝の子で、鎌倉に幕府を開き、右近衛大将、征夷大将軍に任じられた。
岩手、信夫はいずれも陸奥国の地名で、歌枕である。壺の碑は陸奥国にあったとされる歌枕で、文字を刻んだ碑として詠まれた。
初句「みちのくの」は、陸奥国の、の意である。以下の地名を導き、東国にある作者の身をも思わせる。
二句「いはでしのぶは」の「いはで」は、言わないで、の意と、陸奥の地名岩手とを掛ける掛詞である。「しのぶ」は、心に秘める意と、陸奥の地名信夫とを掛ける掛詞である。
三句「えぞ知らぬ」は、とても知ることができない、の意である。「え…ぬ」で不可能を表し、「えぞ」に陸奥の蝦夷を掛けている。係助詞「ぞ」を受けて連体形「ぬ」で結ぶ係り結びで、ここで句切れとなる。
四句「書き尽くしてよ」は、書き尽くしてくれ、の意である。慈円の「申し尽くしがたき」という言葉を受けて答えている。
結句「壺の碑」は、陸奥の歌枕で、文字を刻んだ碑である。「書き尽くす」と碑に文字を刻むこととを取り合わせ、陸奥の地名で一首をまとめている。
いはで:言わないで意と、陸奥の地名岩手を掛ける
しのぶ:心に秘める意と、陸奥の地名信夫を掛ける
えぞ:不可能を表す「え」に、蝦夷を掛ける
つぼのいしぶみ:陸奥国にあったとされる、文字を刻んだ碑
- 作者
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源頼朝
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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人知れずそなたを偲ぶ心をば 傾く月にたぐへてぞやる
- 次の歌
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今日までは人を嘆きて暮れにけり いつ身の上にならむとすらむ