春日山谷の埋もれ木朽ちぬとも
君に告げこせ峰の松風
- 歌の意味
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春日山の谷に埋もれた木のようなわたしが朽ちてしまおうとも、峰の松風よ、わが君に告げ知らせてほしい。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1794
詞書「春日社歌合に松風といふことを」
松を詠む歌の四首目である。春日山の谷の埋もれ木のように世に知られず朽ちてしまおうとも、峰の松風よ、わが身のことを君に告げてほしい、と詠む。不遇の身をかえりみられることを、松風に託して願っている。詞書によれば、春日社の歌合で松風を題として詠んだ歌である。
作者の「家隆朝臣」は藤原家隆である。藤原光隆の子で、『新古今和歌集』の撰者の一人である。宮内卿に至り、藤原定家と並び称された。
春日山は大和国、今の奈良市にある山で、麓に藤原氏の氏神を祭る春日社がある。
初句「春日山」は、藤原氏の氏神を祭る春日社の山である。藤原氏の一人である作者の祈りの場をまず示す。
二句「谷の埋もれ木」は、谷に埋もれて人に知られない木をいい、不遇の身のたとえである。峰の松との高低の対比をなす。
三句「朽ちぬとも」は、朽ちてしまおうとも、の意である。「とも」は逆接仮定を表す。
四句「君に告げこせ」の「こせ」は、…してくれ、の意の願望の助動詞「こす」の命令形である。
結句「峰の松風」は、峰に吹く松風への呼びかけである。谷の埋もれ木と峰の松とが上下に対比され、高きにある君へ思いを届けてほしいという願いを示している。次歌も同じ題で松風を詠む。
うもれぎ:土や水の中に埋もれた木。世に知られない身のたとえ
つぐ:知らせる
- 作者
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藤原家隆
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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憂きながら久しくぞ世を過ぎにける あはれやかけし住吉の松
- 次の歌
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なにとなく聞けば涙ぞこぼれぬる 苔の袂に通ふ松風