たちながら着てだに見せよ小忌衣
飽かぬ昔の忘れ形見に
- 歌の意味
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裁ったままでもよい、せめて立ったまま着て見せてほしい、この小忌衣を。名残の尽きない昔の忘れ形見として。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1799
詞書「後冷泉院御時大嘗会に日蔭の組をして、実基朝臣のもとにつかはすとて、先帝御時思ひ出でて添へて言ひつかはしける」
昔の神事を懐かしむ歌である。せめて小忌衣を着て見せてほしい、名残の尽きない昔の忘れ形見として、と詠む。詞書によれば、後冷泉天皇の大嘗会に日蔭の組紐を作って実基朝臣に贈る際、先帝の御代を思い出して添えた歌である。前の二首に続き、神事の衣に寄せて過ぎた御代を懐かしんでいる。
作者の「加賀朝臣」が誰を指すかについては、確かなことはわからない。「朝臣」は、五位以上の者の名に付ける敬称である。
大嘗会は、天皇が即位した後に初めて行う新嘗祭である。小忌衣は、大嘗会などの神事に奉仕する者が着る、白布に山藍で文様を摺った衣である。
初句「たちながら」の「たち」は、衣を裁つ意と、立つ意とを掛ける掛詞である。裁ったままで、立ったままで、の意となる。
二句「着てだに見せよ」は、せめて着て見せてほしい、の意である。「だに」は最小限の願望を表し、ここで句切れとなる。
三句「小忌衣」は、神事に奉仕する者の着る衣である。前の二首の「やまゐの衣」と同じく山藍で摺った衣で、神事の衣を詠む歌が続く。
四句「飽かぬ昔の」は、名残の尽きない昔の、の意である。先帝の御代を指す。
結句「忘れ形見に」は、思い出のよすがとして、の意である。倒置によって着て見せてほしい理由を示し、過ぎた御代への懐かしさを述べている。
たつ:衣を裁つ意と、立つ意を掛ける
をみごろも:神事に奉仕する者が着る、山藍で文様を摺った白い衣
ひかげのくみ:神事で冠の左右に垂らす組紐
だいじやうゑ:天皇即位後に初めて行う新嘗祭
- 作者
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加賀朝臣
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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いにしへのやまゐの衣なかりせば 忘らるる身となりやしなまし
- 次の歌
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秋の夜の暁方のきりぎりす 人づてならで聞かましものを