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かくばかり憂きを忍びて長らへば
これよりまさる物もこそ思へ

歌の意味
これほどのつらさを耐え忍んで生き長らえたならば、これにもまさるもの思いをすることになったら困る。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1811

詞書「尼にならむと思ひ立ちけるを、人の止め侍りければ」
 親しい人との間の情を詠む歌の一首目である。これほどのつらさを耐えて生き長らえたなら、これ以上のもの思いをすることになりはしないか、と詠む。詞書によれば、尼になろうと決心したのを人が止めたので詠んだ歌で、出家を止める人に、世にとどまることの苦しさを訴えている。
 作者の「和泉式部」は、大江雅致の娘である。和泉守橘道貞の妻となったことからこの名で呼ばれる。為尊親王、敦道親王との恋で知られ、のちに上東門院彰子に仕えた。

 初句「かくばかり」は、これほどまでに、の意である。
 二句「憂きを忍びて」は、つらさを耐え忍んで、の意である。
 三句「長らへば」は、生き長らえたならば、の意である。未然形に「ば」が付いた仮定条件である。
 四句「これよりまさる」は、これにもまさる、の意である。
 結句「物もこそ思へ」の「もこそ」は、…したら困る、という懸念を表し、已然形「思へ」で結ぶ係り結びである。止める人に対し、世にとどまればさらに苦しむことになると訴えている。

しのぶ:耐え忍ぶ。我慢する
ながらふ:生き長らえる
作者
和泉式部
出典
新古今和歌集
前の歌
暁のゆふつけ鳥ぞあはれなる 長き眠りを思ふ枕に
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たらちねのいさめしものをつれづれと ながむるをだに問ふ人もなし