たらちねのいさめしものをつれづれと
ながむるをだに問ふ人もなし
- 歌の意味
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母がいさめたものだったのに、今はこうしてつれづれともの思いにふけって眺めていることさえ、尋ねてくれる人もいない。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1812
詞書「題しらず」
親しい人との間の情を詠む歌の二首目である。昔は母がいさめてくれたものを、今はつれづれともの思いにふけっていても、それを尋ねてくれる人さえいない、と詠む。亡き母を思い、気にかけてくれる人のいない孤独を嘆いている。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「和泉式部」は、大江雅致の娘である。和泉守橘道貞の妻となったことからこの名で呼ばれる。為尊親王、敦道親王との恋で知られ、のちに上東門院彰子に仕えた。原文に作者名はなく、前歌から続く。
初句「たらちねの」は、本来「母」にかかる枕詞であるが、ここでは母そのものを指す。本巻の第千八百十五首も「たらちね」を詠む。
二句「いさめしものを」は、いさめたものだったのに、の意である。「し」は過去の助動詞「き」の連体形、「ものを」は逆接的な詠嘆を表す。
三句「つれづれと」は、することもなく、所在なく、の意である。
四句「ながむるをだに」は、もの思いにふけって眺めていることさえ、の意である。「だに」が最小限のことを示す。
結句「問ふ人もなし」は、尋ねてくれる人もいない、の意である。かつて母がとがめたもの思いを、今は誰も気にかけてくれない寂しさで結んでいる。
たらちね:母。親
いさむ:忠告する。たしなめる
つれづれ:することもなく退屈なさま
- 作者
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和泉式部
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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かくばかり憂きを忍びて長らへば これよりまさる物もこそ思へ
- 次の歌
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あはれとて育みたてしいにしへは 世を背けとも思はざりけむ