うつろはでしばし信太の森を見よ
かへりもぞする葛の裏風
- 歌の意味
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心を移さずに、しばらく信太の森を見ていなさい。葛の葉を裏返す風が吹き返すように、あの人の心も帰って来るかもしれないから。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1820
詞書「和泉式部道貞に忘られて後、ほどなく敦道親王通ふと聞きてつかはしける」
草木に寄せて思いを詠む歌の三首目である。心を移さずにしばらく信太の森を見ていなさい、葛の葉を裏返す風が吹き返すように、相手の心も戻るかもしれない、と詠む。詞書によれば、和泉式部が夫の橘道貞に忘れられた後、ほどなく敦道親王が通うようになったと聞いて贈った歌で、新しい恋に移るのを急がず、夫の心の戻るのを待つよう諭している。
作者の「赤染衛門」は、赤染時用の娘である。大江匡衡の妻で、上東門院彰子に仕えた。原文に作者名はなく、前歌から続く。
信太の森は和泉国、今の大阪府和泉市の森で、葛の葉とともに詠まれる歌枕である。和泉守であった道貞にちなんで置かれている。
初句「うつろはで」は、心を移さないで、の意である。ほかの人へ心を移すことを戒めている。
二句「しばし信太の」は、しばらく、信太の、の意である。「しばし」と「しのだ」の音が響き合い、和泉国の歌枕を導く。
三句「森を見よ」は、森を見ていなさい、の意である。命令形で、待つよう諭し、ここで句切れとなる。
四句「かへりもぞする」の「かへり」は、葛の葉が風に裏返る意と、去った人の心が帰る意とを掛ける掛詞である。「もぞ」は、…するかもしれない、の意を表す。
結句「葛の裏風」は、葛の葉を裏返して吹く風である。体言止めで、次歌の返しの「葛の葉」へとつながっている。
うつろふ:心が移り変わる
かへる:葉が裏返る意と、心が帰る意を掛ける
うらかぜ:葉の裏を返して吹く風
- 作者
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赤染衛門
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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荒く吹く風はいかにと宮城野の 小萩が上を人の問へかし
- 次の歌
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秋風はすごく吹けども葛の葉の うらみ顔には見えじとぞ思ふ