世の中を今はの心つくからに
過ぎにし方ぞいとど恋しき
- 歌の意味
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世の中をもうこれまでと思う心がついたとたんに、過ぎ去った日々がいっそう恋しく思われる。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 1823
詞書「題しらず」
世を厭う心を詠む歌の一首目で、慈円の歌五首の一首目である。世の中をもうこれまでと思い切る心が生じたとたん、過ぎた日々がいっそう恋しい、と詠む。世を捨てる決意がかえって過去への未練を呼び起こす心の矛盾を見つめている。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者の「前大僧正慈円」は、藤原忠通の子で、九条兼実の弟にあたる。天台座主を四度務め、史論書『愚管抄』を著した。
初句「世の中を」は、この世を、の意である。
二句「今はの心」は、今はこれまで、と思い切る心をいう。
三句「つくからに」は、生じるとすぐに、の意である。「からに」は、…するとすぐに、の意を表す。
四句「過ぎにし方ぞ」は、過ぎ去った日々が、の意である。係助詞「ぞ」が結句へ係る。
結句「いとど恋しき」は、係助詞「ぞ」を受けて形容詞の連体形「恋しき」で結ぶ係り結びである。思い切ろうとするほど過去が恋しくなる逆説で、以下に続く慈円の世を厭う歌の始まりとなっている。
いまは:もうこれまで。最期
- 作者
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慈円
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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小笹原風待つ露の消えやらず このひとふしを思ひおくかな
- 次の歌
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世を厭ふ心の深くなるままに 過ぐる月日をうち数へつつ