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何ゆゑにこの世を深く厭ふぞと
人の問へかしやすく答へむ

歌の意味
なぜこの世をそれほど深く厭うのかと、人が尋ねてくれればよい。たやすく答えよう。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1826

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 世を厭う心を詠む歌の四首目で、慈円の歌五首の四首目である。なぜこの世を深く厭うのかと人が問うてほしい、たやすく答えよう、と詠む。世を厭う理由はこの世のありさまそのものにあり、答えは明らかだという心を述べている。
 作者の「前大僧正慈円」は、藤原忠通の子で、九条兼実の弟にあたる。天台座主を四度務め、史論書『愚管抄』を著した。原文に作者名はなく、前歌から続く。

 初句「何ゆゑに」は、どういうわけで、の意である。
 二句「この世を深く」は、この世をそれほど深く、の意である。
 三句「厭ふぞと」は、厭うのかと、の意である。
 四句「人の問へかし」の「かし」は念を押す終助詞で、人が問うてほしい、の意となり、ここで句切れとなる。
 結句「やすく答へむ」は、たやすく答えよう、の意である。本巻の第千七百五十四首で、問われたら答えるより先に袖が濡れると詠んだのと対照的に、本歌ではたやすく答えるとしている。

いとふ:嫌って避ける。世を嫌う
作者
慈円
出典
新古今和歌集
前の歌
ひとかたに思ひとりにし心には なほ背かるる身をいかにせむ
次の歌
思ふべき我が後の世はあるかなきか なければこそはこの世には住め