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世を厭ふ名をだにもさはとどめおきて
数ならぬ身の思ひ出にせむ

歌の意味
それならば、せめて世を厭った者という名だけでも後に留めておいて、取るに足りないこの身の思い出にしよう。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1828

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 世を厭う心を詠む歌の六首目で、西行の歌四首の一首目である。それならば、せめて世を厭った者という名だけでも後に留めて、取るに足りない身の思い出にしよう、と詠む。何も残せない身でも、世を捨てたという名だけは残したいという心を述べている。
 作者の「西行法師」は、俗名を佐藤義清といい、鳥羽院に北面の武士として仕えたが、若くして出家した。諸国を旅して歌を詠み、家集に『山家集』がある。

 初句「世を厭ふ」は、本巻の第千八百二十四首の慈円の歌と同じ初句で、世を嫌い避けることをいう。
 二句「名をだにもさは」は、名だけでもそれならば、の意である。「だに」は最小限の願いを表す。
 三句「とどめおきて」は、後に留めておいて、の意である。六音の字余りである。
 四句「数ならぬ身の」は、取るに足りない身の、の意である。
 結句「思ひ出にせむ」は、思い出にしよう、の意である。「む」は意志の助動詞で、世を捨てたことだけを生きた証としたいという心を示している。

とどめおく:後に残しておく
おもひいで:思い出。生きた証
作者
西行
出典
新古今和歌集
前の歌
思ふべき我が後の世はあるかなきか なければこそはこの世には住め
次の歌
身の憂さを思ひ知らでややみなまし 背くならひのなき世なりせば