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昔より離れがたきは憂き世かな
かたみに忍ぶ仲ならねども

歌の意味
昔から離れにくいのは、このつらい世であることよ。互いに慕い合う仲というわけでもないのに。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1832

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 世を厭う心を詠む歌の十首目である。昔から離れにくいのはこのつらい世だ、互いに慕い合う恋仲でもないのに、と詠む。世を恋人になぞらえ、慕い合うわけでもないのに別れがたい世への執着を、機知をこめて述べている。
 作者の「入道前関白太政大臣」は九条兼実である。藤原忠通の子で、摂政、関白、太政大臣を歴任し、のちに出家した。日記『玉葉』を残した。藤原良経の父である。

 初句「昔より」は、昔から、の意である。
 二句「離れがたきは」は、離れにくいのは、の意である。恋人との別れがたさを思わせる言い方である。
 三句「憂き世かな」の「かな」は詠嘆の終助詞である。前歌の世への執着を受け、離れがたいのは憂き世だと言い切り、ここで句切れとなる。
 四句「かたみに忍ぶ」は、互いに慕い合う、の意である。「かたみに」は、互いに、の意の副詞である。
 結句「仲ならねども」は、そのような仲ではないけれども、の意である。倒置によって、恋仲でもないのに別れがたいという機知を後から示している。

しのぶ:慕い思う
作者
九条兼実
出典
新古今和歌集
前の歌
何事にとまる心のありければ さらにしもまた世の厭はしき
次の歌
思ひ出でてもしも尋ぬる人もあらば ありとな言ひそ定めなき世に