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思ひ出でてもしも尋ぬる人もあらば
ありとな言ひそ定めなき世に

歌の意味
思い出して、もしわたしを尋ねる人がいたならば、生きているとは言わないでくれ。この定めない世に。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1833

詞書「嘆くこと侍りける頃、大峰に籠もるとて、同行どもも、かたへは京へ帰りねなど申してよみ侍りける」
 世を離れて生きる身を詠む歌の一首目で、行尊の歌二首の一首目である。思い出して尋ねる人がいたら、生きているとは言わないでくれ、この定めない世に、と詠む。詞書によれば、嘆くことがあった頃、大峰に籠もろうとして、同行の者たちの一部に都へ帰れなどと言って詠んだ歌である。世との縁を断って修行に入る覚悟を示している。
 作者の「大僧正行尊」は、源基平の子で、園城寺の僧となり、大峰や熊野などで厳しい修行を重ねた。大僧正に至り、天台座主も務めた。
 大峰は大和国の大峰山で、峰々を踏破する修験道の修行の地である。

 初句「思ひ出でて」は、思い出して、の意である。六音の字余りである。
 二句「もしも尋ぬる」は、もしも尋ねる、の意である。
 三句「人もあらば」は、人がいたならば、の意である。六音の字余りで、仮定条件を示す。
 四句「ありとな言ひそ」は、生きているとは言うな、の意である。「な…そ」で禁止を表し、ここで句切れとなる。
 結句「定めなき世に」は、無常の世に、の意である。倒置によって、いつ死ぬともわからない世だからと理由を添え、世との縁を断つ覚悟を示している。

どうぎやう:ともに修行する者
かたへ:一部。一方
作者
行尊
出典
新古今和歌集
前の歌
昔より離れがたきは憂き世かな かたみに忍ぶ仲ならねども
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数ならぬ身を何ゆゑに恨みけむ とてもかくても過ごしける世を