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津の国のながらふべくもあらぬかな
短き葦のよにこそありけれ

歌の意味
津の国の長柄という名のようには、生き長らえることもできないことだ。短い葦の節と節の間のように、短い世なのだから。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 1848

詞書「津の国におはしまして、みぎはの葦を見たまひて」
 無常を詠む歌の三首目である。津の国の長柄という名のようには生き長らえられない、短い葦の節と節の間のように短い世なのだ、と詠む。詞書によれば、摂津国に出かけ、水際の葦を見て詠んだ歌である。津の国の地名と景物に託して、人の世の短さを嘆いている。
 作者の「花山院御歌」は花山天皇の歌である。冷泉天皇の皇子で、在位二年ほどで退位して出家した。
 津の国は摂津国で、長柄は難波の地名である。難波の葦は歌に多く詠まれた景物である。

 初句「津の国の」は、摂津国の、の意である。長柄や難波の葦を導く。
 二句「ながらふべくも」の「ながら」は、津の国の地名の長柄と、生き長らえる意とを掛ける掛詞である。
 三句「あらぬかな」の「かな」は詠嘆の終助詞である。生き長らえることもできないと嘆き、ここで句切れとなる。
 四句「短き葦の」は、短い葦の、の意である。前歌の草の葉末に続き、水辺の葦に寄せる。
 結句「よにこそありけれ」の「よ」は、葦の節と節の間の意と、世の意とを掛ける掛詞である。係助詞「こそ」を受けて已然形「けれ」で結ぶ係り結びで、葦の節のように短い世と思い知る心で結んでいる。

よ:葦の節と節の間の意と、世の意を掛ける
みぎは:水際。波打ち際
ながら:津の国の地名の長柄と、生き長らえる意を掛ける
作者
花山天皇
出典
新古今和歌集
前の歌
暮るる間も待つべき世かはあだし野の 末葉の露に嵐立つなり
次の歌
風早み荻の葉ごとに置く露の おくれ先立つほどのはかなさ