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夜や寒き衣や薄き片削ぎの
行き合ひの間より霜や置くらん

歌の意味
夜が寒いのか、衣が薄いのか。片削ぎの千木が行き合う隙間から、霜が降りているのだろうか。
鑑賞
巻第十九 神祇歌 1855

詞書「住吉御歌となん」
 神詠を収める一連の四首目である。夜が寒いのか衣が薄いのかと問い、社殿の千木が行き合う隙間から霜が降りるのかと詠む歌である。左注は住吉の神の歌と伝えるのみで、詠まれた事情は記されていない。神が夜寒を訴える形で、社殿の屋根の傷みをそれとなく示していると読める。
 この歌には詞書がなく、歌の後に左注が付く。本テキストではこの左注が次歌の番号の下に置かれているが、内容から本歌の左注にあたるため、ここでは本歌の詞書として引く。
 作者名は原文に記されていない。左注により住吉の神の詠とされる。住吉社は摂津国(今の大阪市住吉区)に鎮座する神社で、航海の神、和歌の神として崇敬された。

 初句「夜や寒き」は、夜が寒いのか、の意である。係助詞「や」を形容詞の連体形「寒き」で結び、ここで切れる。
 二句「衣や薄き」も同じく「や」と連体形の組み合わせで、初句と対句をなす。夜と衣という二つの原因を並べて問う。
 三句「片削ぎの」は、社殿の屋根の両端で交差する千木の先端を、斜めに削いだものをいう。
 四句「行き合ひの間より」は、千木が交わる隙間から、の意である。八音の字余りである。
 結句「霜や置くらん」は、霜が降りているのだろうか、の意である。「や」を現在推量の助動詞「らん」の連体形で結ぶ。初句、二句、結句に「や」を三度重ね、夜の寒さの原因を次々に推し量る形となっている。次歌も住吉の神の歌で、二首が並ぶ。

かたそぎ:神社の屋根の千木の先端を斜めに削いだもの
ちぎ:社殿の屋根の両端で交差させて突き出した木
ゆきあふ:出会う、交わる
作者
住吉明神(左注による)
出典
新古今和歌集
前の歌
補陀落の南の岸に堂建てて 今ぞ栄えん北の藤波
次の歌
いかばかり年は経ねども住の江の 松ぞふたたび生ひかはりぬる