- 歌の意味
-
宮人が摺り染めの衣に木綿襷を掛けて、心にかけて誰に思いを寄せているのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第十九 神祇歌 1870
詞書「臨時祭をよめる」
神事や祭りを詠む一連の三首目である。臨時祭に奉仕する宮人が、摺り染めの衣に木綿襷を掛け、心を誰に寄せているのかと詠む歌である。詞書によれば、臨時祭を題に詠んだ歌である。神に仕える装いの宮人の姿を描き、その心の寄せる先を問う形で詠んでいる。
原文には作者名が記されておらず、前歌の作者の紀貫之に続く歌として扱う。
臨時祭は、賀茂社や石清水八幡宮で、例祭とは別に朝廷が催した祭りである。賀茂の臨時祭は十一月、石清水の臨時祭は三月に行われた。
初句「宮人の」は、宮中に仕える人、ここでは祭りに奉仕する舞人などを指す。
二句「摺れる衣に」は、山藍などで模様を摺り染めにした衣に、の意である。臨時祭の舞人が着る青摺の衣を思わせる。
三句「木綿襷」は、楮の繊維で作った木綿の襷で、神事に仕える者が掛ける。
四句「かけて心を」の「かけて」は、襷を「掛けて」と、心に「かけて」とを掛ける掛詞である。三句までが「かけて」を導く序の働きをする。
結句「誰に寄すらん」は、誰に寄せているのだろうか、の意である。現在推量の助動詞「らん」で問う。前歌の「とめて来つらん」と、「らん」で推し量る形を共有し、貫之の歌が二首並ぶ。
みやびと:宮中に仕える人
する:草木の汁で布に模様を摺りつける
ゆふだすき:木綿で作った襷。神事に仕える者が掛ける
かく:襷を「掛ける」意と、心に「かける」意を掛ける
- 作者
-
紀貫之
- 出典
-
新古今和歌集
- 前の歌
-
置く霜に色も変はらぬ榊葉の 香をやは人のとめて来つらん
- 次の歌
-
神風や御裳濯川のそのかみに 契りしことの末を違ふな