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月冴ゆる御手洗川に影見えて
氷に摺れる山藍の袖

歌の意味
月の冴えわたる御手洗川に姿が映って、まるで氷に摺り染めたように見える、山藍の袖よ。
鑑賞
巻第十九 神祇歌 1889

詞書「文治六年女御入内の屏風に、臨時祭描けるところを詠み侍りける」
 賀茂社を詠む一連の二首目である。月の冴える御手洗川に舞人の姿が映り、山藍で摺った袖が氷に摺り染めたように見えると詠む歌である。詞書によれば、文治六年(1190)の女御入内の屏風に、臨時祭を描いた場面を詠んだ歌である。冬の夜の祭りの冷え冷えとした美しさを、月と水と袖の色で描いている。
 作者の「皇太后宮大夫俊成」は、藤原俊成である。藤原定家の父で、『千載和歌集』を撰んだ。
 文治六年の女御入内は、九条兼実の娘の任子が後鳥羽天皇のもとに入内したことを指す。入内の調度として屏風が調えられ、描かれた場面に合わせて歌人たちが歌を詠んだ。
 賀茂の臨時祭は十一月に行われ、舞人は山藍で模様を摺った青摺の衣を着た。

 初句「月冴ゆる」は、月が冷たく澄みわたる、の意である。十一月の臨時祭の冬の夜を示す。
 二句「御手洗川に」は、賀茂社の境内を流れる御手洗川に、の意である。前歌の「みたらし」を受け、同じ川を詠む。
 三句「影見えて」は、姿が映って見えて、の意である。前歌が水面に映る憂き姿を嘆いたのに対し、本歌は祭りの舞人の晴れやかな姿を映し、同じ川に映る影が対をなす。
 四句「氷に摺れる」は、氷に摺り染めたような、の意である。冴えた月光に照らされた水面を氷に見立て、袖の摺り模様と重ねる。本巻の第千八百七十首の「摺れる衣」と、臨時祭の摺り衣を詠む点で対応する。
 結句「山藍の袖」は、山藍で摺り染めた舞人の袖で、体言止めである。

やまあゐ:山地に生える草。葉の汁で布を青く摺り染めた
にようご:天皇の妃の位の一つ
じゆだい:后や女御が正式に宮中に入ること。入内と書く
作者
藤原俊成
出典
新古今和歌集
前の歌
年を経て憂き影をのみみたらしの 変はる世もなき身をいかにせん
次の歌
木綿四手の風に乱るる音冴えて 庭白妙に雪ぞ積もれる