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小塩山神のしるしを松の葉に
契りし色はかへるものかは

歌の意味
小塩山の神がその霊験を常緑の松の葉に約束した、その色は変わることがあろうか、いや変わりはしない。
鑑賞
巻第十九 神祇歌 1900

詞書「最勝四天王院の障子に、小塩山描きたる所」
 大原野の小塩山を詠む歌の二首目である。小塩山の神がその霊験を松の葉に約束した色は、変わることがあろうか、と詠む歌である。詞書によれば、最勝四天王院の障子に描かれた小塩山の絵に添えた歌である。常緑の松の色に、変わることのない神の加護を託している。
 作者の「前大僧正慈円」は、藤原忠通の子で、九条兼実の弟にあたる。天台座主を四度つとめ、歴史書『愚管抄』を著した。
 最勝四天王院は、後鳥羽院が京都の白河に建てた御堂で、障子に諸国の名所を描き、歌人たちがそれぞれの名所の歌を詠んだ。
 なお本文の四句は「契りし色は」とあり、読み仮名の行の「ちぎりしはるは」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。

 初句「小塩山」は、大原野神社の背後の山である。前歌の「をしほの山」を受ける。
 二句「神のしるしを」は、神の霊験を、の意である。
 三句「松の葉に」は、常緑の松の葉に、の意である。
 四句「契りし色は」は、約束したその色は、の意である。松の変わらぬ緑を、神の約束の変わらなさにたとえる。
 結句「かへるものかは」は、変わることがあろうか、いや変わりはしない、の意である。終助詞「かは」による反語である。前歌が散る紅葉を惜しんだのに対し、本歌は色を変えない松を詠み、移ろう紅葉と常緑の松とが対をなす。

さうじ:襖や衝立などの建具の総称。障子と書く
しるし:神仏の霊験、ご利益
作者
慈円
出典
新古今和歌集
前の歌
千代までも心して吹け紅葉葉を 神もをしほの山おろしの風
次の歌
やはらぐる影ぞ麓に曇りなき もとの光は峰にすめども