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岩にむす苔踏みならすみ熊野の
山のかひある行く末もがな

歌の意味
岩に生す苔を踏みならして参るみ熊野の山よ。その山の峡のように、参詣した甲斐のある行く末であってほしい。
鑑賞
巻第十九 神祇歌 1907

詞書「熊野に参りて奉り侍りし」
 熊野を詠む一連の二首目である。岩に生す苔を踏みならして参るみ熊野の山の、その峡にちなんで、参詣した甲斐のある行く末であってほしいと願う歌である。詞書によれば、熊野に参って奉った歌である。険しい山道をたどる参詣の苦労が報われるよう、神に願っている。
 作者の「太上天皇」は後鳥羽院である。高倉天皇の皇子で、譲位ののち院政を行い、『新古今和歌集』の編纂を命じた。

 初句「岩にむす」は、岩に生える、の意である。「むす」は苔などが生じる意の動詞である。
 二句「苔踏みならす」は、苔を踏みならして道とする、の意である。何度も参詣を重ねてきたことを示す。
 三句「み熊野の」は、熊野を尊んでいう語である。
 四句「山のかひある」の「かひ」は、山と山の間の「峡」と、参詣の「甲斐」とを掛ける掛詞である。
 結句「行く末もがな」は、行く末であってほしい、の意で、願望の終助詞「もがな」で結ぶ。前歌の白河院の熊野の歌に、後鳥羽院の熊野の歌が続き、二代の院の熊野参詣の歌が並ぶ。

かひ:山と山の間の「峡」の意と、「甲斐」を掛ける
むす:苔などが生じる
ふみならす:踏んで平らにする
作者
後鳥羽院
出典
新古今和歌集
前の歌
咲きにほふ花のけしきを見るからに 神の心ぞそらに知らるる
次の歌
熊野川下す早瀬のみなれ棹 さすがみなれぬ波の通ひ路