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岩代の神は知るらん知るべせよ
頼む憂き世の夢の行く末

歌の意味
岩代の神はご存じであろう。導いてください。頼みとする、つらいこの世の夢のような人生の行く末を。
鑑賞
巻第十九 神祇歌 1910

詞書「熊野へ詣で侍りしに、岩代の王子に人々の名など書きつけさせて、しばし侍りしに、拝殿の長押に書きつけて侍りし歌」
 熊野を詠む一連の五首目である。岩代の神はご存じであろうから、頼みとするはかない人生の行く末を導いてほしいと願う歌である。詞書によれば、熊野へ参詣した折、岩代の王子で人々の名などを書きつけさせてしばらく休んでいたとき、拝殿の長押に書きつけてあった歌である。夢のようにはかない世の行く末を、神の導きに託している。
 作者は「よみ人しらず」とあり、名は伝わらない。
 岩代の王子は、熊野への参詣道にある王子の一つで、紀伊国の岩代の地にある。

 初句「岩代の」は、岩代の王子の、の意である。
 二句「神は知るらん」は、神はご存じであろう、の意で、ここで切れる二句切れである。
 三句「知るべせよ」は、道案内をしてください、の意で、ここでも切れる。二句の「知る」と三句の「知るべ」とで、同じ語を重ねて畳みかける。
 四句「頼む憂き世の」は、頼みとする、つらいこの世の、の意である。
 結句「夢の行く末」は、夢のようにはかない人生の行く末で、体言止めである。前歌の塩屋の王子に続き、熊野への道の王子で詠まれた歌が並ぶ。本巻の第千九百七首の「行く末もがな」、次歌の「行く末の空」と、熊野の歌に「行く末」の語が繰り返される。

しるべ:道案内、導き
なげし:柱と柱の間に渡した横木。長押と書く
はいでん:本殿の前にある拝礼のための建物
作者
よみ人しらず
出典
新古今和歌集
前の歌
立ち上る塩屋の煙浦風に なびくを神の心ともがな
次の歌
契りあれば嬉しきかかる折にあひぬ 忘るな神も行く末の空