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契りあれば嬉しきかかる折にあひぬ
忘るな神も行く末の空

歌の意味
前世からの縁があるので、このようなうれしい折にめぐりあった。神も忘れないでほしい、この行く末の空まで。
鑑賞
巻第十九 神祇歌 1911

詞書「熊野の本宮焼けて、年の内に遷宮侍りしに参りて」
 熊野を詠む一連の六首目で、熊野の歌の最後である。前世からの縁があってこのうれしい折にめぐりあったのだから、神もこの縁を行く末まで忘れないでほしいと詠む歌である。詞書によれば、熊野の本宮が焼失し、その年のうちに遷宮が行われたときに参詣して詠んだ歌である。社殿の再建に立ち会えた喜びと、神との縁の永続を願う心を表している。
 作者の「太上天皇」は後鳥羽院である。高倉天皇の皇子で、譲位ののち院政を行い、『新古今和歌集』の編纂を命じた。
 遷宮は、社殿を新たに造営して神体を移すことである。

 初句「契りあれば」は、前世からの縁があるので、の意である。六音の字余りである。本巻の第千八百七十二首の初句「契りありて」と、神との縁を詠む点で通う。
 二句「嬉しきかかる」は、うれしい、このような、の意である。
 三句「折にあひぬ」は、折にめぐりあった、の意である。完了の助動詞「ぬ」で言い切る三句切れで、六音の字余りである。
 四句「忘るな神も」は、神も忘れるな、の意である。禁止の終助詞「な」で切れる。「も」は、自分が忘れないように神も、の意を含む。
 結句「行く末の空」は、これから先の日々で、体言止めである。前歌の「夢の行く末」を受け、熊野の歌が「行く末」の語で閉じられる。

せんぐう:社殿を新たに造営して神体を移すこと。遷宮と書く
ちぎり:前世からの因縁、約束
作者
後鳥羽院
出典
新古今和歌集
前の歌
岩代の神は知るらん知るべせよ 頼む憂き世の夢の行く末
次の歌
年経とも越の白山忘れずは 頭の雪をあはれとも見よ