わたつ海の深きに沈むいさりせで
保つかひある法を求めよ
- 歌の意味
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海の深みに沈むような漁をするのではなく、保つかいのある仏の法をこそ求めよ。
- 鑑賞
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巻第二十 釈教歌 1961
詞書「十戒歌よみ侍りけるに、不殺生戒」
十戒を詠む一連の一首目である。海の深みに沈むような殺生の漁をせず、保つかいのある法を求めよと戒める歌である。詞書によれば、十戒の歌を詠んだ際に、不殺生戒を詠んだ歌である。
魚を捕る漁を殺生の代表として挙げ、殺生の罪によって悪道に沈むことを戒め、戒を保って法を求めることを説いている。
作者名は原文になく、前歌に続いて寂然法師の歌である。寂然法師は、俗名を藤原頼業といい、藤原為忠の子である。兄の寂念、寂超とともに大原に隠棲し、大原三寂と呼ばれた。西行と親しく交わった。
十戒は、ここでは『梵網経』に説かれる大乗の十重禁戒を指し、不殺生戒、不偸盗戒、不邪婬戒、不妄語戒、不酤酒戒などの十の戒めからなる。本巻にはそのうち四首が収められている。不殺生戒は、生き物を殺すことを禁じる戒めである。
初句「わたつ海の」は、海を指す語で、漁の場を示す。
二句「深きに沈む」は、海の深みに沈む意で、殺生の罪によって悪道に沈むことを重ねている。
三句「いさりせで」は、漁をしないで、の意で、打消しの接続助詞「で」が用いられる。漁は殺生を代表する行いとして挙げられている。
四句「保つかひある」の「かひ」は、戒を保つ「甲斐」の意と、海の「貝」を掛ける掛詞である。「わたつ海」「沈む」「いさり」「貝」は縁語である。
結句「法を求めよ」は、命令形で、仏の法を求めよと強く戒める。海の底に沈むのではなく、海の貝ならぬ保つ甲斐のある法を求めよという対比で結んでいる。
いさり:魚や貝をとること。漁
かひ:戒を保つ「甲斐」の意と、海の「貝」を掛ける
- 作者
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寂然
- 出典
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新古今和歌集
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別れにしその面影の恋しき 夢にも見えよ山の葉の月
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