花のもと露の情けはほどもあらじ
ゑいなすすめそ春の山風
- 歌の意味
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花の下での露ほどのはかない情けは、長くは続くまい。酔えと勧めてくれるな、春の山風よ。
- 鑑賞
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巻第二十 釈教歌 1964
詞書「不酤酒戒」
十戒を詠む一連の四首目で、この一連の結びの歌である。花の下での露ほどの情けは長くは続かないのだから、酔えと勧めるなと、春の山風に呼びかける歌である。詞書は、十戒のうちの不酤酒戒を題とする。
花見の酒宴のはかない楽しみに誘う春の山風を戒め、酒を人に勧めてはならないという教えを、花と風の景に託している。
作者名は原文になく、前歌に続いて寂然法師の歌である。寂然法師は、俗名を藤原頼業といい、藤原為忠の子である。兄の寂念、寂超とともに大原に隠棲し、大原三寂と呼ばれた。西行と親しく交わった。
不酤酒戒は、酒を売り、人に酒を勧めることを禁じる戒めである。本テキストでは詞書の「酤」の字が外字で記されている。
初句「花のもと」は、花の下で、の意で、花見の酒宴の場を示す。
二句「露の情けは」は、花に置く露のようにはかない情けで、酒宴のひとときの楽しみを指す。
三句「ほどもあらじ」は、打消推量の「じ」で、長くは続くまい、と言い切る。三句切れである。
四句「ゑいなすすめそ」は、「な…そ」の禁止の形で、酔えと勧めるな、の意である。経文の「酒を酤ること」を、酒を勧めることに移している。
結句「春の山風」は、花を散らす春の山風への呼びかけで、体言止めである。花を散らして露の情けをはかなくする風が、同時に酔いを誘う風として置かれている。
ゑひ:酒に酔うこと
すすむ:勧める。誘う
- 作者
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寂然
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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さらぬだに重きが上に小夜衣 わがつまならぬつまな重ねそ
- 次の歌
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憂きをなを昔のゆへと思はずは いかにこの世を恨みはてまし