立ち入らで雲間を分けし月影は
待たぬけしきや空に見えけん
- 歌の意味
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立ち寄らずに雲間を分けて過ぎていった月は、あなたが待っていない様子が空に見えたからでしょう。
- 鑑賞
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巻第二十 釈教歌 1976
詞書「返し」
西方を思う贈答と月の歌の一連の四首目で、前歌への返歌である。立ち寄らずに雲間を分けて過ぎた月は、あなたが待っていない様子が空に見えたからだろうと詠む歌である。詞書は「返し」で、待賢門院堀河から贈られた前歌に答えたものである。
訪れなかったことを責められたのに対し、自らを月にたとえたまま、待っていなかったのはあなたの方だと軽く切り返している。
作者の「西行法師」は、俗名を佐藤義清といい、鳥羽院の北面の武士であったが、二十三歳で出家した。諸国を旅して多くの歌を詠み、家集に『山家集』がある。
初句「立ち入らで」は、立ち寄らないで、の意で、打消しの接続助詞「で」が用いられる。門の前を通り過ぎたことを、月の運行として言い表している。
二句「雲間を分けし」は、雲の切れ間を分けて進んだ、の意で、過去の「き」の連体形が用いられる。
三句「月影は」は、贈歌の「月影」をそのまま受け、自らを月とする見立てを引き継いでいる。
四句「待たぬけしきや」は、待っていない様子が、の意で、係助詞「や」による疑問である。贈歌の「そらだのめ」の恨みを、相手が待っていなかったことへと反転させている。
結句「空に見えけん」は、「や」を受けて連体形「けん」で結ぶ係り結びである。贈歌の「空」を受けて、空に見えたのだろうと推し量り、軽妙に切り返して結ぶ。
たちいる:立ち寄る。中に入る
くもま:雲の切れ間
けしき:様子。気配
- 作者
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西行
- 出典
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新古今和歌集
- 前の歌
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西へ行くしるべと思ふ月影の そらだのめこそかひなかりけれ
- 次の歌
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昔見し月の光をしるべにて 今宵や君が西へ行くらん