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白雲の八重に重なるをちにても
思はむ人に心隔つな

歌の意味
白雲が幾重にも重なる遠い所にいても、あなたを思っている人に対して、心を隔てないでくれ。
鑑賞
巻第八 離別歌 380

詞書「陸奥へまかりける人に詠みて遣はしける」
 陸奥へ下る人に、白雲が八重に重なるほど遠い所へ行っても、あなたを思う人に心を隔てないでほしいと贈った歌である。雲によって隔てられる距離と、心の隔てとを重ねて、変わらぬ思いを願っている。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。『古今和歌集』の撰者の一人で、仮名序を書いた。

 初句「白雲の」は、隔たりを示す景物で、前歌と同じ初句を共有する。前歌が雲の分かれるさまを、この歌が雲の重なるさまを詠み、同じ白雲を別の姿でとらえる。
 二句「八重に重なる」は、幾重にも重なる意で、距離の果てしなさを雲の厚さで示す。
 三句「をちにても」は、「をち」が遠方の意で、「ても」でたとえ遠くであってもと譲歩する。
 四句「思はむ人に」は、婉曲の「む」で、あなたを思っているであろう人、すなわち作者を含む都の人を指す。
 結句「心隔つな」は、禁止の終助詞「な」で、心を隔てるなと願う。雲が隔てても心は隔てるなという対比で結ぶ。

をち:遠く離れた所
へだつ:間に置いて離す、疎遠にする
作者
紀貫之
出典
古今和歌集
前の歌
白雲のこなたかなたにたち別れ 心を幣と砕く旅かな
次の歌
別れてふことは色にもあらなくに 心にしみてわびしかるらむ