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秋霧のともにたち出でて別れなば
はれぬ思ひに恋ひや渡らむ

歌の意味
秋霧が立ちこめるのとともに、あなたが旅立って別れてしまったならば、霧が晴れないように晴れない思いのまま、恋い続けることになるのだろうか。
鑑賞
巻第八 離別歌 386

詞書は前の歌に続き「藤原後蔭が唐物の使に長月のつごもりがたにまかりけるに、上の男ども酒たうびけるついでに詠める」
 前歌と同じ送別の席で詠まれた歌である。秋霧が立つのと同時に旅立つ人を思い、霧が晴れないように心も晴れないまま恋い続けるのだろうかと、別れた後の思いを見通している。
 作者の「平もとのり」は平元規である。平中興の子で、左衛門大尉を務めた。

 初句「秋霧の」は、秋の景物で、「たつ」「はれぬ」の語と響き合う。前歌の「秋の別れ」を受けて、同じ秋の季節感を引き継ぐ。
 二句「ともにたち出でて」は、霧が「立つ」と旅に「立ち出づ」を掛ける掛詞である。霧が立つのと一緒に旅立つ、という重ね合わせになっている。
 三句「別れなば」は、完了の「ぬ」の未然形に「ば」がついた仮定の形で、第三百七十首の四句「たち別れなば」と同じ構文を共有する。
 四句「はれぬ思ひに」は、霧が「晴れぬ」と心が「晴れぬ」を掛ける掛詞で、初句の「秋霧」と縁語をなす。
 結句「恋ひや渡らむ」は、係助詞「や」と推量の「む」の係り結びで、恋い続けるのだろうかと嘆く。第三百八十三首の二句「恋ひやわたらむ」と同じ句を共有する。

たつ:霧が立つ意と、旅に立つ意を掛ける
はる:霧が晴れる意と、心が晴れる意を掛ける
こひわたる:恋い続ける
作者
平元規
出典
古今和歌集
前の歌
もろともに鳴きてとどめよきりぎりす 秋の別れは惜しくやはあらぬ
次の歌
命だに心にかなふものならば 何か別れの悲しからまし