命だに心にかなふものならば
何か別れの悲しからまし
- 歌の意味
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せめて命だけでも思いどおりになるものならば、どうして別れがこれほど悲しいことがあろうか。
- 鑑賞
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巻第八 離別歌 387
詞書「源実が筑紫へ湯浴みむとてまかりけるに、山崎にて別れ惜しみける所にて詠める」
源実が筑紫へ湯治に下る際、山崎で別れを惜しんだ場で詠まれた歌である。命さえ思いどおりになれば再会は約束されるのだから別れも悲しくないのに、命がままならないからこそ別れは悲しいと、人の命のはかなさに別れの悲しみの根を見いだしている。
作者の「しろめ」は白女である。摂津の江口の遊女で、『大和物語』にも宇多院の御前で歌を詠んだ話が見える。
初句「命だに」は、副助詞「だに」が「せめて〜だけでも」の意を表し、最小限の願いとして命を挙げる。この歌から第三百八十九首までは、源実の筑紫下向を見送る一連である。
二句「心にかなふ」は、思いどおりになる意で、自分の意のままにできることをいう。
三句「ものならば」は、仮定の条件を示し、反実仮想の結句へつなぐ。
四句「何か別れの」は、反語の「何か」で、どうして〜かと問いかける。
結句「悲しからまし」は、反実仮想の助動詞「まし」で、実際には命が思いどおりにならないからこそ別れが悲しいことを裏返しに示す。
ゆあみ:湯治、温泉に入ること
かなふ:思いどおりになる
- 作者
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白女
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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秋霧のともにたち出でて別れなば はれぬ思ひに恋ひや渡らむ
- 次の歌
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人やりの道ならなくにおほかたは 行き憂しと言ひていざ帰りなむ