かつ越えて別れも行くかあふさかは
人頼めなる名にこそありけれ
- 歌の意味
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越えるそばから、こうして別れても行くのか。逢坂というのは、人に「逢う」と期待させるだけの、あてにならない名であったのだなあ。
- 鑑賞
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巻第八 離別歌 390
詞書「藤原惟岳が武蔵介にまかりける時に、送りに逢坂を越ゆとて詠みける」
武蔵介として下る藤原惟岳を送り、逢坂の関を越えようとした時に詠まれた歌である。「逢ふ」という名をもつ関を越えながら別れていく現実に、その名は人に期待をもたせるだけのものだったと嘆いている。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。『古今和歌集』の撰者の一人で、仮名序を書いた。
初句「かつ越えて」は、「かつ」が〜するそばからの意で、関を越える行為と同時に別れが進むことを示す。
二句「別れも行くか」は、詠嘆の「か」で、別れても行くのかと驚き嘆き、ここで句切れとなる二句切れである。
三句「あふさかは」は、逢坂の関の名に「逢ふ」を掛ける掛詞である。本巻の第三百七十四首が同じ関に名のとおり人をとどめよと願ったのに対し、この歌は名が実に反することを嘆き、対をなす。
四句「人頼めなる」は、「人頼め」が人に期待をもたせておいて裏切ることの意で、名のむなしさをいう。
結句「名にこそありけれ」は、係助詞「こそ」と已然形「けれ」の係り結びで、名の実態に気づいた嘆きを示す。本巻の第三百八十二首と同じ結句を共有し、ともに地名の名が現実と食い違うことを詠む。
あふさか:逢坂の関の名と「逢ふ」を掛ける
ひとだのめ:人に期待をもたせておきながら、それに応えないこと
こゆ:越える
- 作者
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紀貫之
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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慕はれて来にし心の身にしあれば 帰るさまには道も知られず
- 次の歌
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君が行く越の白山知らねども 雪のまにまに跡はたづねむ