古典和歌stream

惜しむらむ人の心を知らぬ間に
秋の時雨と身ぞふりにける

歌の意味
私を惜しんでくれるというあなたの心を知らないでいるうちに、秋の時雨が降るように、この身はすっかり年老いてしまったことだ。
鑑賞
巻第八 離別歌 398

詞書「と詠めりける返し」
 前歌で紀貫之が詠んだ惜別の歌に、兼覧王が返した歌である。惜しんでくれる心を知らないうちに、時雨が降るように自分は年老いてしまったと、相手の厚意に感謝しつつ、老いの身を謙遜して応じている。
 作者の「兼覧王」は、文徳天皇の皇子である惟喬親王の子で、官は宮内卿に至った。

 初句「惜しむらむ」は、現在推量の「らむ」で、惜しんでくれているらしいと、前歌の結句「をしとこそ思へ」を受けて応じる。
 二句「人の心を」は、「人」が相手である貫之を指す。
 三句「知らぬ間に」は、打消の「ぬ」で、その心を知らずにいるうちにの意となる。
 四句「秋の時雨と」は、前歌の「雨」を受けて時雨とし、時雨が降るように、と比喩で結句を導く。
 結句「身ぞふりにける」は、「ふり」が時雨が「降る」と身が「古る」を掛ける掛詞である。係助詞「ぞ」と連体形「ける」の係り結びで、年老いてしまったことを嘆く。

しぐれ:秋の末から冬にかけて降ったりやんだりする雨
ふる:時雨が降る意と、年老いる意を掛ける
作者
兼覧王
出典
古今和歌集
前の歌
秋萩の花をば雨に濡らせども 君をばましてをしとこそ思へ
次の歌
別るれど嬉しくもあるか今宵より 相見ぬ先に何を恋ひまし