古典和歌stream

限りなく思ふ涙にそほちぬる
袖は乾かじ逢はむ日までに

歌の意味
この上なくあなたを思って流す涙にぐっしょり濡れた袖は、乾くことはないだろう、また会える日までは。
鑑賞
巻第八 離別歌 401

詞書「題しらず」
 限りなく思う涙に濡れた袖は、再会の日まで乾くことはないだろうと詠んだ歌である。前歌が涙を形見として包むのに対し、この歌は涙に濡れた袖が再会まで乾かないとし、涙を別れている間の時間の長さと結びつけている。
 作者は「よみ人しらず」とされ、名は伝わらない。

 初句「限りなく」は、この上なくの意で、思いの深さを示す。第三百六十七首「限りなき雲居のよそに」と同じ語を共有し、そちらが空間の果てしなさを、この歌が思いの果てしなさをいう。
 二句「思ふ涙に」は、相手を思って流す涙で、三句の「そほつ」へつながる。
 三句「そほちぬる」は、「そほつ」がびっしょり濡れる意で、完了の「ぬる」で濡れきってしまったさまを示す。
 四句「袖は乾かじ」は、打消推量の「じ」で、乾かないだろうと述べ、ここで句切れとなる四句切れである。
 結句「逢はむ日までに」は、再会の日を期限として示し、四句との倒置によって、再会を待つ時間の長さを印象づける。

そほつ:びっしょりと濡れる
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
飽かずして別るる袖の白玉を 君が形見と包みてぞ行く
次の歌
かきくらしことは降らなむ春雨に ぬれぎぬ着せて君をとどめむ