ほのはのとあかしの浦の朝霧に
島隠れ行く舟をしぞ思ふ
- 歌の意味
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ほのぼのと夜が明けてゆく明石の浦の朝霧の中を、島の陰に隠れて遠ざかってゆく舟を、しみじみと思うことだ。
- 鑑賞
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巻第九 羈旅歌 409
詞書「題しらず」、左注「この歌は、ある人のいはく、柿本人麿が歌なり」
夜明けの明石の浦で、朝霧の中を島陰へと消えてゆく舟を見送り、その行方に思いを寄せる歌である。ほのかに明けてゆく薄明の情景と、次第に見えなくなる舟の動きが、旅立ちと別れの余韻を静かに伝えている。
古来名歌として尊ばれ、藤原公任の「和漢朗詠集」にも採られた。人麿の作とする伝承とあいまって、歌聖人麿を代表する一首とみなされてきた。
作者の「よみ人しらず」は作者不明の意である。左注に「ある人のいはく、柿本人麿が歌なり」とあり、柿本人麿の作とする一説があるが、確証はない。
なお本文の初句は「ほのはのと」とあり、読み仮名の行の「ほのほのと」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
初句「ほのはのと」は、読み仮名の行によれば「ほのぼのと」で、夜がほのかに明けてゆくさまを表す。次句の「あかし」を導き、夜明けの薄明かりを印象づけている。
二句「あかしの浦の」は、夜が「明かし」の意と、地名「明石」を掛ける掛詞である。明石は播磨国の歌枕で、都から西国へ向かう船旅の要所である。
三句「朝霧に」は、舟の姿をおぼろにする霧を置き、見えなくなっていく過程を準備している。
四句「島隠れ行く」は、舟が島の陰に隠れて見えなくなってゆくさまで、視界から去ってゆく動きを捉えている。
結句「舟をしぞ思ふ」の「し」は強意の副助詞、「ぞ」は係助詞で、連体形「思ふ」で結ぶ係り結びである。次歌の第四百十首も同じく「をしぞ思ふ」で結ばれ、見送る舟と自らの旅とが同じ結句で並べられている。
あかし:夜が明けて明るい意の「明かし」と、播磨国の地名「明石」を掛ける
しまがくる:島の陰に隠れる
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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都出でて今日みかの原泉川 川風寒し衣かせ山
- 次の歌
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唐衣着つつなれにしつましあれば はるばるきぬる旅をしぞ思ふ