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消え果つる時しなければ越路なる
白山の名は雪にぞありける

歌の意味
雪がすっかり消えてしまう時がないので、越路にある白山という名は、その雪によるものだったのだなあ。
鑑賞
巻第九 羈旅歌 414

詞書「越の国へまかりける時白山を見てよめる」
 越の国へ下る途中で白山を仰ぎ、一年中消えることのない雪を見て、「白山」という名の由来を悟った驚きを詠んだ歌である。山の名に理由を見いだす理知的な発想に、躬恒らしい機知がうかがえる。
 詞書から、越の国へ赴いた折、雪をいただく白山を目の当たりにして詠んだ歌であるとわかる。白山は加賀、越前、美濃にまたがる霊峰で、消えない雪の山として都にも知られた歌枕である。
 作者の「みつね」は凡河内躬恒である。紀貫之らとともに古今和歌集の撰者を務め、三十六歌仙の一人に数えられる。官位は低かったが、即興の才に優れた歌人として知られた。

 初句「消え果つる」は、すっかり消えてしまうことをいう。消えないものが雪であることは結句まで明かされず、謎解きのような構成になっている。
 二句「時しなければ」の「し」は強意の副助詞で、「なければ」は已然形に「ば」が付いた確定条件である。消える時がないので、という理由を示している。
 三句「越路なる」の「越路」は越の国、また越の国へ通じる道をいい、「なる」は存在を表す。
 四句「白山の名は」で山の名に焦点を当てる。前歌の第四百十三首が霞に隠れて見えない山を詠んだのに対し、本歌は雪によって白く際立つ山を詠んでおり、見えない山と見える山が対照をなしている。
 結句「雪にぞありける」の「ぞ」は係助詞、「ける」は詠嘆の助動詞「けり」の連体形で、係り結びをなす。名の由来は雪であったのだと気づいた感動を表している。

きえはつ:すっかり消えてしまう
こしぢ:北陸地方の越の国、また越の国へ通じる道
しらやま:加賀、越前、美濃にまたがる山、現在の白山(はくさん)
作者
凡河内躬恒
出典
古今和歌集
前の歌
山隠す春の霞ぞ恨めしき いづれ都の境なるらむ
次の歌
糸による物ならなくに別れ路の 心細くも思ほゆるかな