糸による物ならなくに別れ路の
心細くも思ほゆるかな
- 歌の意味
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糸に縒り合わせるものでもないのに、別れて行く旅路が、なんとも心細く思われることだ。
- 鑑賞
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巻第九 羈旅歌 415
詞書「東へまかりける時道にてよめる」
東国へ下る旅の途中、都の人々と別れて進む道の心細さを詠んだ歌である。「心細し」の「細し」から糸を連想し、糸を縒るわけでもないのにと言いなす機知によって、別離の寂しさを表している。
詞書から、東国へ下る道中で詠んだ歌であるとわかる。旅立ちの道すがら、別れてきた人々を思う心が歌の底にある。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆した。のちに土佐守となり、任を終えて帰京する旅を「土佐日記」に著した。三十六歌仙の一人である。
初句「糸による」の「よる」は糸を縒り合わせる意の「縒る」で、「糸」「縒る」「細く」は縁語をなしている。
二句「物ならなくに」の「なくに」は、~ではないのに、の意となる語法である。糸を縒るものではないのに、とまず打ち消しておき、下の句で糸のような細さを持ち出している。
三句「別れ路の」は、人と別れて旅立って行く道をいう。
四句「心細くも」は糸の縁語として「細く」を用いた表現で、係助詞「も」が心細さを強めている。前歌の第四百十四首が山の名の由来を解き明かしたのに続き、本歌も言葉の響きから縁語を導いており、言葉への関心を示す歌が並べられている。
結句「思ほゆるかな」の「思ほゆ」は自然にそう思われる意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。
よる:糸をより合わせる、縒る
わかれぢ:人と別れて行く道、旅立ちの道
おもほゆ:自然と思われる、感じられる
- 作者
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紀貫之
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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消え果つる時しなければ越路なる 白山の名は雪にぞありける
- 次の歌
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夜を寒み置く初霜を払ひつつ 草の枕にあまたたび寝ぬ