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夜を寒み置く初霜を払ひつつ
草の枕にあまたたび寝ぬ

歌の意味
夜が寒いので降りる初霜を払いながら、草を枕とする旅寝を幾度も重ねたことだ。
鑑賞
巻第九 羈旅歌 416

詞書「甲斐の国へまかりける時道にてよめる」
 甲斐の国へ向かう道中、寒い夜に降りる初霜を払いながら、野宿を重ねてきた旅の苦労を詠んだ歌である。「あまたたび」に「旅」を響かせ、繰り返される旅寝のつらさを印象づけている。
 詞書から、甲斐の国へ下る途中で詠んだ歌であるとわかる。初霜の降りる時期の旅であり、冷え込みの中を進む様子がうかがえる。
 作者の「みつね」は凡河内躬恒である。紀貫之らとともに古今和歌集の撰者を務め、三十六歌仙の一人に数えられる。官位は低かったが、即興の才に優れた歌人として知られた。

 初句「夜を寒み」は「~を~み」の語法で、夜が寒いので、の意となり、原因を示している。
 二句「置く初霜を」は、寒さのために降りた初霜をいう。「置く」は霜や露が降りることである。
 三句「払ひつつ」の「つつ」は反復継続を表す接続助詞で、夜ごとに霜を払う動作の繰り返しを示している。
 四句「草の枕に」は、旅寝、野宿を意味する「草枕」を言い開いた表現である。前歌の第四百十五首が旅立ちの道の心細さを詠んだのに対し、本歌は旅の夜を重ねた後の実感を詠んでおり、旅の時間の経過が配列に表れている。
 結句「あまたたび寝ぬ」の「あまたたび」は、幾度もの意の「数多度」と「旅」を掛ける掛詞である。「ぬ」は完了の助動詞で、幾度も旅寝をしてしまったと振り返っている。

おく:霜や露が降りる
くさのまくら:草を枕にする意で、旅寝、野宿のこと
あまたたび:幾度もの意の「数多度」と、「旅」を掛ける
作者
凡河内躬恒
出典
古今和歌集
前の歌
糸による物ならなくに別れ路の 心細くも思ほゆるかな
次の歌
夕月夜おぼつかなきを玉匣 ふたみの浦はあけてこそ見め