夕月夜おぼつかなきを玉匣
ふたみの浦はあけてこそ見め
- 歌の意味
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夕方の月の光ではぼんやりとしておぼつかないので、二見の浦は、夜が明けてから見ることにしよう。
- 鑑賞
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巻第九 羈旅歌 417
詞書「但馬の国の湯へまかりける時に、二見の浦といふ所に泊まりて夕さりの乾飯賜うべけるに、供にありける人々の歌よみけるついでによめる」
夕月の光ではおぼつかないので、名高い二見の浦の景色は夜が明けてから見ようと詠んだ歌である。「玉匣」から「ふた」「み」「あけ」と櫛箱の縁語を連ね、旅先の座にふさわしい軽やかな技巧を見せている。
詞書によれば、但馬の国の温泉へ向かう途中、二見の浦に泊まって夕食の乾飯をとる折に、同行の人々が歌を詠んだ機会に作者も詠んだという。旅の一行が歌を詠み合う場の作である。
作者の「ふちはらのかねすけ」は藤原兼輔である。藤原北家の出身で、中納言に至り、賀茂川の堤に邸があったことから堤中納言と呼ばれた。紫式部の曾祖父にあたり、三十六歌仙の一人である。
初句「夕月夜」は夕方に出ている月、またその月のある夜をいう。
二句「おぼつかなきを」は、月の光がほのかで景色がはっきりしないことをいう。「を」は順接の接続助詞で、はっきりしないので、の意となる。
三句「玉匣」は美しい櫛箱のことで、「ふた」「み」「あけ」を導く枕詞である。
四句「ふたみの浦は」の「ふたみ」は、櫛箱の「蓋」「身」と地名「二見」を掛ける掛詞である。二見の浦は但馬国の海辺の地とされる。
結句「あけてこそ見め」の「あけ」は、夜が「明け」と箱を「開け」を掛ける掛詞である。係助詞「こそ」を受けて、意志の助動詞「む」が已然形「め」で結ばれる係り結びとなる。前歌の第四百十六首が寒い夜の旅寝を重ねたのに対し、本歌は夜明けを待って景色を見ようとする歌であり、夜から朝への流れが配列に見られる。
ゆふづくよ:夕方の月、また月の出ている夕方
たまくしげ:美しい櫛箱、「ふた」「み」「あく」などを導く枕詞
ふたみ:櫛箱の「蓋」と「身」の意と、地名「二見」を掛ける
あく:夜が「明く」意と、箱を「開く」意を掛ける
かれいひ:干した飯、旅の携帯食
- 作者
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藤原兼輔
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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夜を寒み置く初霜を払ひつつ 草の枕にあまたたび寝ぬ
- 次の歌
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狩り暮らし棚機つ女に宿借らむ 天の河原に我は来にけり