一年にひとたび来ます君待てば
宿貸す人もあらじとぞ思ふ
- 歌の意味
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織姫は一年に一度だけおいでになる彦星を待っているのだから、ほかに宿を貸す人などいないだろうと思う。
- 鑑賞
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巻第九 羈旅歌 419
詞書「親王この歌を返す返すよみつつ返しえせずなりにければ、供に侍りてよめる」
前歌で業平が織女に宿を借りようと詠んだのを受け、織女は年に一度訪れる彦星を待っているのだから、ほかの人に宿を貸すことはあるまいと応じた歌である。親王に代わって機知に富む返しを詠み、座の興を締めくくっている。
詞書によれば、惟喬親王は業平の歌を繰り返し口ずさむばかりで返歌ができずにいたため、供として控えていた有常が代わって詠んだという。「伊勢物語」第八十二段にも同じ場面がある。
作者の「きのありつね」は紀有常である。紀名虎の子で、姉妹の静子は文徳天皇の更衣として惟喬親王を生んでおり、有常は親王の叔父にあたる。娘は在原業平の妻となった。
初句「一年に」は、年にただ一度という七夕の逢瀬の少なさを示す。
二句「ひとたび来ます」の「来ます」は「来」の尊敬語で、彦星の訪れを敬っていう。初句と「ひと」の音を重ねる響きがある。
三句「君待てば」の「君」は彦星を指す。「待てば」は已然形に「ば」が付いた確定条件で、待っているのだから、の意となる。
四句「宿貸す人も」は前歌の「宿借らむ」を受けた語で、借りると貸すが対をなしている。
結句「あらじとぞ思ふ」の「じ」は打消推量の助動詞、「ぞ」は係助詞で、連体形「思ふ」と係り結びをなす。前歌の第四百十八首と贈答の一対をなし、宿を求める側と断る側の対照が座の笑いを誘っている。
きます:「来」の尊敬語、おいでになる
- 作者
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紀有常
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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狩り暮らし棚機つ女に宿借らむ 天の河原に我は来にけり
- 次の歌
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このたびは幣もとりあへず手向山 紅葉の錦神のまにまに