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来べきほどときすぎぬれや待ちわびて
鳴くなる声の人をとよむる

歌の意味
来るはずの頃合いが過ぎてしまったからだろうか、待ちかねたように鳴く声が人々の心を騒がせている。
鑑賞
巻第十 物名 423

詞書「時鳥」
 来るはずの頃合いが過ぎてしまったからだろうか、待ちかねたように鳴く声が人々を騒がせている、と詠む歌である。二句の「ほどときすぎ」に題の「ほととぎす」を隠し、同時に待たれる鳥そのものの声を歌の主題としている。前歌の鶯に続いて夏の鳥を題とし、巻頭の二首が鳥の名で並ぶ配列となっている。
 作者の「藤原としゆきの朝臣」は藤原敏行である。藤原富士麻呂の子で、右兵衛督に至った。三十六歌仙の一人で、能書家としても知られる。

 初句「来べきほど」は、ほととぎすが来るはずの頃合い、の意で、「べし」は当然の意を表す。
 二句「ときすぎぬれや」は「時過ぎぬれや」で、已然形に係助詞「や」が付き、過ぎてしまったからだろうか、と原因を推し量る。初句から続く「ほどときすぎ」に題の「ほととぎす」が隠されている。
 三句「待ちわびて」は、待ちかねて、の意で、鳴く声が待ちこがれた末のものであることを示す。
 四句「鳴くなる声の」の「なる」は音や声から推し量る推定の助動詞で、姿は見えず声だけが聞こえるさまを表す。
 結句「人をとよむる」の「とよむ」は下二段活用で、響かせる、騒がせる、の意である。二句の「や」を受けて連体形「とよむる」で結ぶ。

ほどときすぎ:「程時過ぎ」(来るべき時期が過ぎる)の意に、鳥の名「ほととぎす」を詠み込む
まちわぶ:待ちくたびれる、待ちかねる
とよむ:声や音を響かせる、騒がせる
作者
藤原敏行
出典
古今和歌集
前の歌
心から花のしづくにそほちつつ うくひずとのみ鳥の鳴くらむ
次の歌
波のうつせみれば玉ぞ乱れける 拾はば袖にはかなからむや