波のうつせみれば玉ぞ乱れける
拾はば袖にはかなからむや
- 歌の意味
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波が打ち寄せる瀬を見ると、玉が乱れ散っている。拾ったならば、袖の中ではかなく消えてしまうだろうか。
- 鑑賞
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巻第十 物名 424
詞書「空蝉」
波が打ち寄せる瀬を見ると玉が乱れ散っている、拾ったら袖の中ではかなく消えてしまうだろうか、と詠む歌である。砕ける波のしぶきを玉に見立て、初句から二句にかけての「波のうつ瀬見れば」に題の「うつせみ(空蝉)」を詠み込んでいる。蝉の抜け殻を意味する題にふさわしく、手にすれば消えるはかなさを結句に置いている。次歌の第四百二十五首は壬生忠岑の返しで、同じ題を詠み込んで応じており、物名の巻では珍しい贈答の形をとる。
作者の「在原しけはる」は在原滋春である。在原業平の次男で、「在次君」とも呼ばれた。
初句「波のうつ」は、波が打ち寄せる、の意で、次の「瀬」に続く。
二句「せみれば玉ぞ」は「瀬見れば玉ぞ」で、初句から続く「うつせみ」に題が隠されている。係助詞「ぞ」は三句の結びへとかかる。
三句「乱れける」は「ぞ」を受けて連体形で結び、しぶきの玉が散り乱れるさまを描く。ここで句切れとなる。
四句「拾はば袖に」は仮定の形で、もし拾ったならば袖に、の意である。
結句「はかなからむや」の「や」は疑問を表し、袖の中ではかなく消えてしまうだろうかと危ぶむ。題の空蝉が持つはかなさの印象と響き合う。
うつせみ:「波のうつ瀬見れば」の中に、蝉の抜け殻を意味する題の「空蝉」を詠み込む
たま:ここでは砕け散る波のしぶきを玉に見立てたもの
- 作者
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在原滋春
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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来べきほどときすぎぬれや待ちわびて 鳴くなる声の人をとよむる
- 次の歌
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たもとより離れて玉を包まめや これなむそれとうつせみむかし