たもとより離れて玉を包まめや
これなむそれとうつせみむかし
- 歌の意味
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袂を離れて、ほかに玉を包むものなどあるだろうか。これこそがその玉だと、袖に移して見るがよい。
- 鑑賞
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巻第十 物名 425
詞書「返し(空蝉)」
前歌の在原滋春の歌に答えた返歌で、袂を離れて玉を包むものなどあろうか、これこそがその玉だと袖に移して見るがよい、と詠む歌である。袖では玉がはかなく消えてしまうだろうかという前歌の危惧を打ち消し、贈歌と同じく題の「うつせみ」を結句の「うつせみむかし」に詠み込んでいる。題を守りながら贈答として応じる技巧の歌である。
作者の「壬生忠岑」は古今和歌集の撰者の一人である。三十六歌仙に数えられ、壬生忠見の父である。
初句「たもとより」は、袂から、の意で、玉を包むものとしての袖を示す。
二句「離れて玉を」は、袂を離れて玉を、の意で、前歌の「玉」をそのまま受けている。
三句「包まめや」の「め」は推量の助動詞「む」の已然形で、「や」が付いて反語となり、包むものなどあろうか、いやない、と打ち消す。ここで句切れとなる。
四句「これなむそれと」の「なむ」は強意の係助詞で、これこそがその玉だと指し示す。
結句「うつせみむかし」は「移せ見むかし」で、袖に移して見るがよい、の意と解される。「かし」は念を押す終助詞で、ここに題の「うつせみ」が詠み込まれている。
たもと:袖、特に袖の下の袋状の部分
うつす:移す、ここでは玉を袖に移し取ること、「うつせ見む」の中に題の「うつせみ」を詠み込む
- 作者
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壬生忠岑
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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波のうつせみれば玉ぞ乱れける 拾はば袖にはかなからむや
- 次の歌
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あなうめに常なるべくも見えぬかな 恋しかるべき香は匂ひつつ