あしひきの山たちはなれ行く雲の
宿り定めぬ世にこそありけれ
- 歌の意味
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山を立ち離れて漂っていく雲が宿りを定めないように、定めのない世の中であったのだ。
- 鑑賞
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巻第十 物名 430
詞書「橘」
山を離れて漂っていく雲のように、定まった宿りのない世の中であったのだ、と詠む歌である。二句の「山たちはなれ」に題の「たちばな(橘)」を詠み込んでいる。行方の定まらない雲に無常の世を重ねた述懐の歌となっている。
作者の「をののしけかけ」は小野滋蔭である。小野氏の官人とみられるが、経歴の詳細は伝わらない。
初句「あしひきの」は「山」にかかる枕詞である。
二句「山たちはなれ」は、山を立ち離れて、の意で、ここに題の「たちばな」が隠されている。
三句「行く雲の」の「の」は主格で、雲が宿りを定めないことをいい、それがそのまま世の定めなさを言い表す比喩となっている。
四句「宿り定めぬ」は、身を寄せる所を定めない、の意で、雲の漂うさまと世の定めなさを重ねる。
結句「世にこそありけれ」は「こそ」を受けて已然形「けれ」で結ぶ。「けり」は気づきの詠嘆を表し、この世はそういうものであったのだと悟る心を示す。
たちばな:「山たちはなれ」の中に詠み込まれた題で、橘をいう
やどり:身を寄せる所、宿
- 作者
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小野滋蔭
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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あふからもものはなほこそ悲しけれ 別れむことをかねて思へば
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み吉野の吉野の滝に浮かびいづる 泡をかたまの消ゆと見つらむ