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朝露を分けそほちつつ花見むと
今ぞ野山をみなへしりぬる

歌の意味
朝露をかき分けて濡れながら、花を見ようとして、今こそ野山をすっかり巡り歩いて知り尽くしたことだ。
鑑賞
巻第十 物名 438

詞書は前の歌に続き「女郎花」
 朝露をかき分けて濡れながら、花を見ようと、今こそ野山をすっかり歩き回って知り尽くしたことだ、と詠む歌である。四句から結句にかけての「をみなへし」に題を詠み込んでいる。前歌が蜘蛛の糸という小さな景に題を隠したのに対し、こちらは野山を歩き回る人の姿という広い景で詠み、女郎花の題を異なる尺度で扱っている。
 作者の「とものり」は紀友則である。紀貫之の従兄で、古今和歌集の撰者の一人であったが、完成を見ずに没した。三十六歌仙の一人である。

 初句「朝露を」は、朝の露を、の意で、野に分け入る時刻を示す。
 二句「分けそほちつつ」は、露をかき分けて濡れながら、の意で、「つつ」は動作の継続を表す。巻頭の第四百二十二首の「そほちつつ」と同じ語を用いている。
 三句「花見むと」は、花を見ようとして、の意で、野山を歩く目的を示す。
 四句「今ぞ野山を」の「ぞ」は強意の係助詞で、結句の結びへとかかる。「野山を」の「を」から題の語が始まる。
 結句「みなへしりぬる」は「皆経知りぬる」で、残らず巡り歩いて知り尽くした、の意である。「ぞ」を受けて連体形「ぬる」で結び、四句と合わせた「をみなへし」に題が隠されている。

そほつ:濡れる、しっとりと濡れそぼる
ふ:所を経る、巡り歩く
をみなへし:「野山をみなへしりぬる」にまたがって詠み込まれた題で、女郎花をいう
作者
紀友則
出典
古今和歌集
前の歌
白露を玉に貫くやとささがにの 花にも葉にも糸をみなへし
次の歌
小倉山峰たちならし鳴く鹿の 経にけむ秋を知る人ぞなき