ありと見て頼むぞかたき空蝉の
世をばなしとや思ひなしてむ
- 歌の意味
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確かにあるものと見て頼りにするのは難しい。このはかない世を、いっそ無いものと思い定めてしまおうか。
- 鑑賞
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巻第十 物名 443
詞書「尾花」
あると思って頼みにするのは難しい、このはかない世を、いっそ無いものと思い定めてしまおうか、と詠む歌である。四句の「世をばなしとや」に題の「をばな(尾花)」を詠み込んでいる。尾花はすすきの穂をいう。無常の世への諦観を詠んだ述懐の歌で、「空蝉」の語は本巻の第四百二十四首、第四百二十五首の題とも重なる。
作者は「よみ人しらず」で、名は伝わらない。
初句「ありと見て」は、確かにあるものと見て、の意である。
二句「頼むぞかたき」は、頼りにすることは難しい、の意で、「ぞ」を受けて連体形「かたき」で結ぶ。ここで句切れとなる。
三句「空蝉の」は「世」にかかる枕詞で、はかない現世を印象づける。
四句「世をばなしとや」は、この世を無いものと、の意で、「をばな」に題の「尾花」が隠されている。「や」は疑問の係助詞である。
結句「思ひなしてむ」は、思い定めてしまおうか、の意で、「てむ」は強い意志や推量を表し、「や」を受けて連体形で結ぶ。
うつせみ:現世、また蝉の抜け殻、ここでは「世」にかかる枕詞
おもひなす:そうだと思い込む、思い定める
をばな:「世をばなしとや」の中に詠み込まれた題で、すすきの穂をいう
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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わが宿の花踏みしだくとりうたむ のはなければやここにしも来る
- 次の歌
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うちつけにこしとや花の色を見む 置く白露の染むるばかりを