うちつけにこしとや花の色を見む
置く白露の染むるばかりを
- 歌の意味
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いきなり濃い色だと、花の色を見るのだろうか。置いた白露が染めているだけなのに。
- 鑑賞
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巻第十 物名 444
詞書「けにごし」
いきなり濃い色だと花の色を見るのだろうか、置いた白露が染めているだけなのに、と詠む歌である。初句から二句にかけての「けにこし」に題の「けにごし」を詠み込んでいる。けにごしは牽牛子と書き、朝顔の種、また朝顔をいうとされる。花の色の濃さは露が染めた結果にすぎないという見立てで、露が草木を染めるという当時の発想に基づいている。
作者の「やたへの名実」は矢田部名実である。平安時代前期の官人とみられるが、経歴の詳細は伝わらない。
初句「うちつけに」は、突然に、いきなり、の意である。「つけに」の「け」から題の語が始まる。
二句「こしとや花の」は「濃しとや花の」で、濃いと花の、の意である。初句と合わせた「けにこし」に題の「けにごし」が隠されている。「や」は疑問の係助詞である。
三句「色を見む」は「や」を受けて連体形「む」で結び、花の色を見るのだろうか、と問いかける。ここで句切れとなる。
四句「置く白露の」は、花に置いた白露が、の意である。
結句「染むるばかりを」は、染めているだけなのに、の意で、「を」は逆接的な詠嘆を表す。
けにごし:牽牛子、朝顔の種、また朝顔をいうとされる、「うちつけにこし」の中に詠み込まれる
- 作者
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矢田部名実
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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ありと見て頼むぞかたき空蝉の 世をばなしとや思ひなしてむ
- 次の歌
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花の木にあらざらめども咲きにけり ふりにしこのみなる時もがな