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花の木にあらざらめども咲きにけり
ふりにしこのみなる時もがな

歌の意味
花の咲く木ではないだろうが、花が咲いたことだ。古びてしまったこの木の実がなるように、年老いたこの身にも栄える時があってほしい。
鑑賞
巻第十 物名 445

詞書「二条の后、春宮の御息所と申しける時に、めどに削り花挿せりけるを詠ませたまひける」
 花の木ではないだろうが花が咲いたことだ、古びてしまったこの身にも実がなる時があってほしい、と詠む歌である。詞書によれば、二条の后藤原高子が春宮の御息所と呼ばれていた頃、めどに削り花を挿してあったのを題に詠ませた折の作で、削り花に託して、年を重ねても報われない身の上を嘆き、栄達を願う心を込めている。物の名を句の中に隠す形はとらず、題の削り花そのものを詠む点で本巻では異色である。「めどにけづり花」は古今伝授の三木の一つに数えられ、本巻の第四百三十一首の「をがたまの木」、第四百四十九首の「かはなぐさ」とともに秘説とされた。
 作者の「文屋やすひて」は文屋康秀である。三河掾、縫殿助などを務めた官人で、六歌仙の一人である。

 初句「花の木に」は、本当の花の木に、の意で、削り花が作り物であることを踏まえる。
 二句「あらざらめども」は、ではないだろうけれども、の意で、「ざらめ」は打消と推量の組み合わせである。
 三句「咲きにけり」は、咲いたことだ、と詠嘆し、作り物の花が開いたさまを捉える。ここで句切れとなる。
 四句「ふりにしこのみ」は、古びてしまったこの身、の意で、「このみ」は「木の実」と「この身」を掛けている。削り花を作った古い木と、年老いた作者自身を重ねる。
 結句「なる時もがな」の「なる」は実が「生る」と身が「成る(出世する)」を掛け、「もがな」は願望を表す。

めど:メドハギの古名で、茎を占いの具に用いた植物
けづりばな:木を削って花の形に作った造花
ふる:古くなる、年をとる
このみ:「木の実」の意と、「この身」の意を掛ける
なる:実が「生る」の意と、身が「成る」(栄達する)の意を掛ける
作者
文屋康秀
出典
古今和歌集
前の歌
うちつけにこしとや花の色を見む 置く白露の染むるばかりを
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山高み常にあらしのふくさとは にほひもあへず花ぞ散りける