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花の色はただひとさかりこけれども
返す返すぞ露は染めける

歌の意味
花の色は、ただひと盛りの間だけ濃いけれども、露は繰り返し繰り返し花を染めていたのだ。
鑑賞
巻第十 物名 450

詞書「さがりごけ」
 花の色はただひと盛りの間だけ濃いけれども、露は繰り返し繰り返し花を染めていたのだ、と詠む歌である。二句から三句にかけての「さかりこけ」に題の「さがりごけ」を詠み込んでいる。さがりごけは木の枝から垂れ下がる苔をいう。露が草木を染めるという発想は、本巻の第四百四十四首とも共通する。
 作者の「たかむこのとしはる」は高向利春である。平安時代前期の官人で、経歴の詳細は伝わらない。

 初句「花の色は」は、花の色というものは、と主題を示す。
 二句「ただひとさかり」は、ただ一時の盛り、の意で、「さかり」から題の語が始まる。
 三句「こけれども」は「濃けれども」で、濃いけれども、の意である。二句と合わせた「さかりこけ」に題の「さがりごけ」が隠されている。
 四句「返す返すぞ」は、繰り返し繰り返し、の意で、「ぞ」は結句の結びへとかかる。
 結句「露は染めける」は「ぞ」を受けて連体形「ける」で結び、露が何度も染めてきたのだと気づく心を表す。

さがりごけ:木の枝などから垂れ下がる苔、「ひとさかりこけれども」にまたがって詠み込まれる
作者
高向利春
出典
古今和歌集
前の歌
うばたまの夢になにかはなぐさまむ うつつにだにも飽かぬ心は
次の歌
命とて露を頼むにかたければ 物わびしらに鳴く野辺の虫