あぢきなしなげきなつめそ憂きことに
あひくるみをば捨てぬものから
- 歌の意味
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つまらないことだ。嘆きを胸に詰め込むな。つらいことに出会って苦しむこの身を、捨ててしまうわけでもないのに。
- 鑑賞
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巻第十 物名 455
詞書「梨、棗、胡桃」
つまらないことだ、嘆きを胸に詰め込むな、つらいことに出会って苦しむ身を捨ててしまうわけでもないのに、と詠む歌である。初句の「あぢきなし」に「なし」、二句の「なげきなつめそ」に「なつめ」、四句の「あひくるみ」に「くるみ」と、三つの果実の名を順に詠み込んでいる。前歌の四つの題に続き、複数の題を一首に収める歌が並ぶ。
作者の「兵衛」は藤原高経の娘である。宮仕えをして兵衛と呼ばれた。
初句「あぢきなし」は、つまらない、どうにもならない、の意で、ここで句切れとなる。末尾の「なし」に題の「梨」が隠されている。
二句「なげきなつめそ」は「嘆きな詰めそ」で、「な〜そ」は禁止を表し、嘆きを詰め込むな、の意である。「なつめ」に題の「棗」が隠されている。ここで句切れとなる。
三句「憂きことに」は、つらいことに、の意である。
四句「あひくるみをば」は「逢ひ苦る身をば」で、出会って苦しむ身を、の意である。「くるみ」に題の「胡桃」が隠されている。
結句「捨てぬものから」の「ものから」は逆接の接続助詞で、身を捨てるわけでもないのに、の意である。
なし:「あぢきなし」の末尾に詠み込まれた題で、梨をいう
なつめ:「な詰めそ」の中に詠み込まれた題で、棗をいう
くるみ:「苦る身」(苦しむ身)の意と、題の「胡桃」を掛ける
- 作者
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兵衛
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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いささめに時まつまにぞひはへぬる 心ばせをば人に見えつつ
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波の音のけさからことに聞こゆるは 春の調べや改まるらむ