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波の音のけさからことに聞こゆるは
春の調べや改まるらむ

歌の意味
波の音が今朝から格別に琴の音のように聞こえるのは、立春を迎えて春の調べに改まったからだろうか。
鑑賞
巻第十 物名 456

詞書「唐琴といふ所にて春の立ちける日詠める」
 波の音が今朝から格別に聞こえるのは、立春を迎えて春の調べに改まったのだろうか、と詠む歌である。二句の「けさからことに」に地名の「からこと(唐琴)」を詠み込み、さらに「琴」の縁で「調べ」を用いて、波の音を琴の音色に見立てている。唐琴は備前国の地名とされる。ここから本巻は地名を題とする歌が続く。
 作者の「安倍清行朝臣」は大納言安倍安仁の子である。陸奥守などを務めた。

 初句「波の音の」は、波の音が、の意で、主語を示す。
 二句「けさからことに」は、今朝から格別に、の意で、「からこと」に地名の「唐琴」が隠されている。
 三句「聞こゆるは」は、聞こえるのは、の意で、下の句で理由を推し量る。
 四句「春の調べや」の「調べ」は音楽の調子をいい、二句に隠した「琴」の縁語となる。「や」は疑問の係助詞である。
 結句「改まるらむ」は「や」を受けて連体形「らむ」で結び、立春によって調べが改まったのだろうか、と推し量る。

からこと:「今朝からことに」の中に詠み込まれた地名で、備前国の唐琴をいう
しらべ:音楽の調子、音律
作者
安倍清行
出典
古今和歌集
前の歌
あぢきなしなげきなつめそ憂きことに あひくるみをば捨てぬものから
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楫にあたる波のしづくを春なれば いかがさき散る花と見ざらむ