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楫にあたる波のしづくを春なれば
いかがさき散る花と見ざらむ

歌の意味
舟の楫にあたって散る波のしずくを、春なのだから、どうして咲いては散る花と見ないでいられようか。
鑑賞
巻第十 物名 457

詞書「いかが崎」
 舟の楫にあたって散る波のしずくを、春なのだから、どうして咲いては散る花と見ないでいられようか、と詠む歌である。四句の「いかがさき」に地名を詠み込んでいる。いかが崎は地名とされるが、所在ははっきりしない。波しぶきを花に見立てた趣向で、本巻の第四百五十九首の「波の花」とも響き合う。
 作者の「兼覧王」は惟喬親王の子である。文徳天皇の孫にあたる。

 初句「楫にあたる」は、舟の楫に当たる、の意で、舟で行く場面を示す。
 二句「波のしづくを」は、楫にかかって散る波のしぶきを、の意である。
 三句「春なれば」は、春であるので、の意で、見立ての理由を示す。
 四句「いかがさき散る」の「いかが」は反語で、「いかがさき」に地名の「いかが崎」が隠されている。「さき散る」は、咲いては散る、の意である。
 結句「花と見ざらむ」は、花と見ないことがあろうか、いや花と見る、と反語で結ぶ。

かぢ:舟をこぐ道具、櫂や櫓
いかがさき:「いかがさき散る」の中に詠み込まれた地名
作者
兼覧王
出典
古今和歌集
前の歌
波の音のけさからことに聞こゆるは 春の調べや改まるらむ
次の歌
かの方にいつからさきに渡りけむ 波路は跡も残らざりけり